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Thursday, October 8, 2026

2026年度ノーベル化学賞を日本の硤合憲三氏とフランスのアンリ・ケーガン氏が受賞、授賞理由となった「不斉自己触媒反応」とは?

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BREAKING NEWS
The Royal Swedish Academy of Sciences has decided to award the 2026 #NobelPrize in Chemistry to Henri B. Kagan and Kenso Soai “for the discovery of non-linear effects and autocatalysis in asymmetric organic synthesis.” https://t.co/nH090ql1Xc

— The Nobel Prize (@NobelPrize) October 7, 2026


人類を含めて地球上の生物のほとんどはタンパク質で構成されており、タンパク質は複数種類のアミノ酸がつながって三次元構造に折りたたまれた物質です。そして、アミノ酸は分子構造上、右手型と左手型という鏡映しのように対称的な2種類のエナンチオマー(光学異性体)が存在するキラル化合物に分類されます。例えば、アミノ酸の一種であるアラニンにはL-アラニンとD-アラニンという2つのエナンチオマーがありますが、生体内で生成されるのはL-アラニンだけです。

©Johan Jarnestad/The Royal Swedish Academy of Sciences

通常の化学合成では左手型と右手型の両方が生成されるにもかかわらず、生物を構成するアミノ酸はなぜか左手型のみになる「ホモキラリティー」が起こる理由については、生命の起源にかかわる謎として長年研究されています。

1953年にイギリスの物理学者であるチャールズ・フランクは、「不斉触媒を使った不斉合成反応であること」「最初に生じたわずかな差を増幅する仕組みがあること」「生成物自身が触媒になる自己触媒反応であること」の3条件がそろえばホモキラリティーを再現できるはずだと主張し、「生命の分子はなぜ片方のエナンチオマーだけにそろっているのか」を化学反応だけで説明するための数学モデル「フランク・モデル」を提唱しました。以降、ホモキラリティーを研究する化学者にとって「フランク・モデルを実際の合成反応で示せるか」が大きな課題となりました。

このうち、1つ目の条件である「不斉触媒を使った不斉合成反応」については、1904年にドイツの化学者であるヴィリー・マルクヴァルトが実験に成功していました。その後、2001年にノーベル化学賞を受賞したウィリアム・ノールズ氏、バリー・シャープレス氏、野依良治氏の3名、そして2021年のノーベル化学賞を受賞したベンジャミン・リスト氏とデイヴィッド・マクミラン氏は、片方のエナンチオマーを高い選択性で作れることを実験で示し、ホモキラリティー研究の大きな発展に寄与しました。

©Johan Jarnestad/The Royal Swedish Academy of Sciences

今回の受賞者の1人であるケーガン氏は、「ホモキラリティーにおける非線形効果」を実験で示したことが評価されました。特定のエナンチオマーを作る不斉有機合成では、1980年代までは「不斉触媒に右手型と左手型が混ざっていれば、その割合に応じて生成物も右手型と左手型に分かれる」と考えられていたため、反応の方向を決める不斉触媒についても特定のエナンチオマーだけを使うべきだと考えられてました。

しかし、ケーガン氏は「不斉触媒のエナンチオマーの割合が、そのまま生成物に反映されるとは限らないのではないか」と考えました。実際に調べてみたところ、右手型と左手型が混ざった触媒は、同じ型同士の触媒より反応を進めるのが遅いことが判明。そして、不斉触媒の偏りと生成物の偏りは単純な比例関係にならず、小さな偏りが反応によって増幅される場合があることを発見しました。ケーガン氏は1986年にこの研究結果を「ホモキラリティーにおける非線形効果」として発表しました。これはフランク・モデルの2つ目である「最初に生じたわずかな差を増幅する仕組みがあること」を示すものでした。

©Johan Jarnestad/The Royal Swedish Academy of Sciences

そして、硤合氏はこのホモキラリティーにおける非線形効果が「不斉自己触媒反応」によってもたらされるケースを発見しました。通常は反応を促す触媒と反応した結果である生成物は別物ですが、不斉自己触媒反応は生成物自体が触媒として機能した結果、爆発的に反応が進みます。

硤合氏が注目したのは5-ピリミジルアルカノールというキラル化合物です。この物質を作る反応では、最初は一方のエナンチオマーがわずか2%多いだけだったにもかかわらず、反応後にはその偏りが87%にまで拡大したことが判明。さらに、生成した5-ピリミジルアルカノール自身が次の5-ピリミジルアルカノールを作る反応を促進することがわかりました。つまり、「作られた物質が自分自身をさらに作らせる」という自己触媒反応になっていたというわけです。

さらに硤合氏は研究を進め、2003年には右手型と左手型が同じ割合から始めても、偶然生じたごくわずかな差を自己触媒反応が増幅し、最終的にほぼ一方の構造だけが合成される「Soai反応」を実験で示しました。このSoai反応は「エナンチオマーの割合にごくわずかな偏りが存在すれば、最終的にほぼ純粋なエナンチオマーが得られる不斉自己触媒反応が実在すること」を世界で初めて実証したものであり、さらにフランク・モデルの3つ目の条件である「生成物自身が触媒になる自己触媒反応であること」を示す結果といえます。

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