[ITmedia ビジネスオンライン] ソニーの半導体工場、アイシン九州の部品工場に学ぶBCP 熊本地震と台湾リスクが問う『分散と集積』の二重構造
戦略系コンサルティングファームを経て、BIG4のパートナーを7年半務める。現在フリーの経営コンサルタントとして活動。ビジネススクール卒業後、米国での勤務経験あり。多文化的な視点から、日本語・英語の両方でオピニオンやコラムを執筆中。
7月28日に最大震度7を観測した熊本地震から3カ月がたとうとしている。亡くなられた方々に哀悼の意を表するとともに、今も不自由な暮らしを続ける方々に心からお見舞い申し上げたい。
イオンモールの爆発や日本製紙の八代工場における煙突倒壊といった映像が記憶に残る一方、ビジネスの現場では復旧の速さが際立った。
トヨタ系部品大手アイシンの子会社、アイシン九州(熊本市)の工場は、2016年の地震では約4カ月も操業が止まったが、今回は発災から5日後に一部生産を再開した。
画像センサー生産の主力拠点であるソニー熊本工場は、復旧にかかる期間が約3カ月から約3週間へと短縮された。揺れが前回よりも小さかったことが最大の要因とはいえ、ソニーグループは10年かけて培ったBCPの知見も「一助」になったと説明している。
帝国データバンクによれば、震度5強以上の揺れを観測した25市区町村には2万2193社が集まり、その約17%は県外から進出した企業だ。熊本に拠点を置く企業は、なぜ早期復旧が可能だったのか。その理由を考えると、企業が取るべき戦略が見えてくる。
ソニーの「熊本テクノロジーセンター」。屋上に太陽光発電設備を導入している(出所:ソニーグループの環境に関する取り組み)
トヨタ国内完成車工場が停止……10年前の教訓を生かせ
早期復旧の理由として、アイシンの近藤大介副社長は「供給をつなぐという教訓が生きた」と語る。生産体制の分散と在庫の余裕を確保したアイシン九州の対策は、教科書通りのサプライチェーン強靭(きょうじん)化だ。
10年前――2016年に発生した熊本地震で、トヨタ自動車の国内完成車工場の大半が停止を余儀なくされた。その原因となったのは「ドアチェック」という部品だった。これは、ドアが開き過ぎたり勝手に閉まったりするのを防ぐ手のひらサイズの部品だ。トヨタの国内生産車の約9割がアイシン製を使い、その生産がアイシン九州に集中していた(当時は月90万本以上)。
ドアチェックの概要(出所:アイシン九州のWebサイト)
この教訓から、生産拠点を分散した。集中から分散へ。これは地震対策にとどまらず、地政学リスクへの備えとしても近年注目される動きだ。台湾の半導体受託製造大手、TSMCも本拠地である台湾に加え、熊本や米アリゾナ州に生産拠点を広げている。
半導体産業の集積地、熊本 産業クラスタに潜む“急所”
部品の生産拠点は分散されたが、それでも2026年の地震を受けて、完成車の生産が一時止まった。国内自動車生産の約15%を担う九州で、トヨタ自動車、日産自動車、ダイハツ工業などが操業を停止し、部品が届かない愛知県のトヨタ田原工場まで止まった。本田技研工業に至っては、国内3つの四輪車工場が一時的に全てストップした。
前回の震災から10年で、地震に対する備えは進んだ。それでもなお「どこか1カ所」が止まると全国に波及する構造は残っているわけだ。
KioskNews shows a cleaned-up reading view extracted from the publisher’s page — the original always lives on their site, not ours.
