無料のAdobe代替アプリ集「ArtCraft Crafting Apps」、オープンソースでPhotoshop・Illustrator・Premiere・Lightroom・Acrobat・After Effects・InDesignの代替を目指す
AIによる画像・動画制作ソフトを開発するArtCraftが、Adobe Creative Cloudのクリエイティブツール群をオープンソースソフト「Crafting Apps」として作り直そうとするプロジェクトを進めています。Crafting AppsはPhotoshopやIllustratorなどのAdobeスイートと同じ操作体系でありながら、各アプリがRustで一から開発されているのが特徴。ArtCraftはサブスクリプションやクラウドへの常時接続を必要としないクリエイティブ環境を目指しています。
Crafting Apps: open-source creative tools — ArtCraft
https://getartcraft.com/apps
ArtCraft
https://github.com/storytold
ArtCraftは、クリエイター向けのオープンソースツールを開発しているプロジェクトです。中心となる「ArtCraft」はAIを使った画像・動画制作環境で、テキストから画像や動画を生成するだけでなく、2Dや3Dで構図を組み立てたり、キャラクターのポーズやカメラ位置を決めたりしてから生成AIで映像化できます。Nano Banana、GPT Image、FLUX、Seedream、Seedance、Kling、Veo、Soraなど多数の生成AIモデルに対応しています。
これとは別にArtCraftが開発を進めているのが「Crafting Apps」です。2026年10月時点でリリースされているのは以下の7種類。記事作成時点では7種類すべてがAdobe製品をそのまま置き換えられる完成品になったわけではなく、PhotoCraftとPrintCraftは「Early alpha(早期アルファ版)」、VectorCraft、FilmCraft、LightCraft、EffectCraft、DesignCraftを「In development(開発中)」と位置付けています。
1:PhotoCraft
PhotoCraftは、レイヤー、マスク、調整レイヤー、レイヤースタイル、テキスト、ベクター、ブラシなどを備えた、Photoshopのような画像編集ソフトで、PSDおよびPSB形式のレイヤーを保持した読み書きにも対応します。
PhotoCraft: The image editor you already know how to use. — ArtCraft
https://getartcraft.com/apps/photocraft
ArtCraftによると実際に収集した135個のテストファイルのうち134個について、読み込んで保存しても内容が変化しないラウンドトリップを達成したとのこと。RGBだけでなくCMYK、Lab、グレースケールと8bit、16bit、32bitのドキュメントを扱え、ICCカラーマネジメントやソフトプルーフにも対応しています。描画にはMetal、Vulkan、DirectX 12、WebGPUを利用します。
ペンツールやダイレクト選択、図形のブーリアン演算、スナップ、グラデーションメッシュ、ブレンド、エンベロープ変形などを実装しており、ラスター画像をベクター化する画像トレース機能も備え、SVGとPDFのインポート・エクスポート、PNG、JPEG、WebPへの書き出しに対応します。ArtCraftは「Retina解像度で2万個の図形を約27ミリ秒で描画できる」としています。
ソースモニターとプログラムモニター、マルチトラックタイムライン、3点編集、トリミングなどを備えるほか、カーブ、カラーホイール、HSL、LUTを使ったカラーグレーディング、HDRやLog映像のワークフローにも対応します。約55種類の映像エフェクトと30種類のトランジション、キーフレーム編集、EBU R128準拠のラウドネスメーターなども実装されています。さらにFFmpegに依存せず、H.264、HEVC、ProRes、VP9、AAC、Opusなどのコーデックを独自に実装しているのも特徴です。
露出や色、トーンカーブ、8バンドのカラーミキサー、3ウェイカラーグレーディングなどを用意し、ブラシやグラデーションのほか、輝度や色の範囲、空、被写体、背景を対象としたマスクも利用できます。DNG、CR2、ARW、NEF、RAF、RW2、PEF、ORFなどのRAW形式を独自のRust製デコーダーで処理します。写真のアルバム管理、評価、フラグ、検索なども備えています。
PDFの閲覧だけでなく、ページの回転、削除、追加、並べ替え、文書の結合、ページ抽出、分割などに対応します。PDFを編集する際にはリンク、フォームフィールド、レイヤー、ブックマークを維持する設計になっています。また、RC4からAES-256までの暗号化されたPDFを扱えるほか、自動保存やクラッシュからの復旧も備えています。
コンポジションとタイムライン、テキスト、図形、映像、ヌル、調整レイヤーなどに加えて、カメラとライトを使った3Dレイヤーにも対応。ぼかし、色補正、ディストーション、キーイング、パーティクル、シミュレーションなど259種類のエフェクトを実装しています。JavaScriptによるエクスプレッションにも対応し、H.264やProRes、PNG、TIFF、32bit EXRなどに書き出せます。
見開きページ、親ページ、テキストフレーム間で文章を流し込む機能、段落・文字スタイル、スウォッチ、テキストの回り込みなどを備えています。組版にはKnuth-Plassアルゴリズムによる段落組版を採用し、ハイフネーションやオプティカルマージン、ベースライングリッドにも対応。CMYKや特色、裁ち落とし、トンボを含む印刷向けPDFやPDF/Aも出力できるとのこと。
ArtCraftが7種類のアプリに共通して掲げている特徴の1つが、作業するファイルをユーザー自身のコンピューター上で処理することです。クラウドとの往復を前提とせず、サブスクリプション、ライセンスサーバー、アカウントなどへの依存を避ける方針になっています。ただし、生成AIを利用する本体のArtCraftについては、外部の生成モデルを利用するためのクレジットが別途必要になります。
さらにCrafting Appsは、最初からAIエージェントによる操作も想定されています。GUIを人間が操作するだけでなく、CLI、JSON形式の制御チャンネル、MCPサーバーを通じてアプリを操作できる設計です。例えばDesignCraftでは、メニュー項目、ツール、パネル、ダイアログをJSONまたはMCPから操作できるとのこと。生成AIそのものをアプリに組み込むのではなく、AIエージェントが既存の編集機能を操作できるように設計されているわけです。
ただし、Crafting AppsはAdobe Creative Cloud製品と同じ用途や操作体系を意識しているものの、Adobe独自のファイル形式との互換性はアプリによって異なります。PhotoCraftはPSD形式とPSB形式を直接読み書きできる一方、EffectCraftはAfter EffectsのAEPファイルを開くことはできません。また、FilmCraftやDesignCraftはXML、AAF、IDMLなどの交換形式を介して既存ソフトとのデータ移行を可能にしているとのこと。
各プロジェクトのソースコードはGitHubで公開されており、開発環境を用意すれば現時点のバージョンをビルドできますが、多くのアプリについてmacOS、Windows、Linux向けの正式なインストーラーは今後提供される予定となっています。また、ArtCraftのメンバーはソーシャルニュースサイト・Hacker Newsに「Microsoft OfficeやAutoCAD、Solidworksに相当するツールも開発しようと思っています」とコメントしています。
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