米バルダ「宇宙で抗がん剤」1カ月でカプセル3機打ち上げ

米宇宙企業「バルダ・スペース・インダストリーズ(Varda Space Industries、以下バルダ)」が先月だけで宇宙船3機を新たに打ち上げ、「宇宙製薬工場」の実験を拡大している。
バルダは先月1日に宇宙船2機を打ち上げたのに続き、同20日にも宇宙船1機を追加で打ち上げた。民間企業が地球に帰還するカプセル2基を一度に軌道に投入したのは今回が初めてだ。
同社が打ち上げた宇宙船は一般的な洗濯機ほどの大きさだ。現在、地上約480キロ上空を周回している。このうち1機の内部では、抗がん治療薬候補物質の結晶が成長している。残り2機では、宇宙船が地球に帰還する際に必要な熱遮蔽材と航法システムを試験している。バルダは今後もこうした無人宇宙工場を複数、軌道に投入し、宇宙で薬を作って地球に持ち帰ることを目指している。
◇宇宙で薬を作る理由

バルダがあえて宇宙船まで送り、宇宙で抗がん治療薬の結晶を成長させようとする理由は、宇宙の無重力環境にある。
地上では重力のため、薬の成分が結晶を形成する過程で重い部分が沈んだり、混ざり合ったりする現象が起きる。この過程で大きさや形にばらつきが生じる可能性がある。
一方、宇宙では微小重力環境のおかげで、結晶がより均一で整った形に育つ。結晶の大きさや形がそろえば、薬が体内で溶ける速度や保存可能期間も変わり得る。
これをうまく調整すれば、薬の投与方法も変えられる。病院で数時間かけて静脈注射を受けなければならなかった抗がん剤を、簡単な皮下注射の形に変えることも容易になる。
バルダの宇宙船には無人の小型実験室が搭載されている。実験が終わると、試料を入れたカプセルが宇宙船から分離して大気圏に入り、パラシュートで地上に降下する。
バルダは2024年2月、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症治療薬リトナビルの成分結晶を宇宙で育てた初のカプセルを回収した後、複数回にわたりカプセル回収に成功した。2027年にも7回、2028年には10回の追加宇宙ミッションを計画している。
◇半導体も今や宇宙で…鍵は「コスト削減」
最近では新薬候補物質だけでなく、半導体材料を宇宙で作ろうとする試みも続いている。
半導体チップは、原子が規則正しく並んで積み重なった塊(結晶)を薄く切って作る。このとき原子配列が整っているほど性能は高くなる。
英国企業スペース・フォージは、品質の高い小さな半導体結晶を「種」のように作って地球に持ち帰り、地上工場でこれを大量に育てようとしている。昨年6月に製造衛星を打ち上げ、12月には軌道上で結晶製造に必要な高温プラズマを作ることに成功した。同社は2030年までに、製造から地球への回収までの全過程を実証することを目標としている。
ただし、こうした「宇宙工場」が今後、実際に収益を上げられるかはなお見極める必要がある。製品を宇宙で作り、再び地球に持ち帰るには莫大な費用がかかるためだ。それを負担できるほど、製品の性能が地上で作ったものより格段に優れていなければならない。同じ品質の製品をどれだけ多く、継続して作り出せるかを証明することも課題だ。
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