中国がインドを標的に新たな規制を実施 「係争関係にある機微な国」に対して経済的威圧を武器化する中国の思惑 | 政治・経済・投資 | 東洋経済オンライン

2026年9月、インドで行われたBRICS首脳会議での習近平国家主席(左)とモディ首相(写真:Anadolu/Getty Images)
-
三船 恵美 駒澤大学法学部教授、JFIR日本国際フォーラム上席研究員、RIPS平和・安全保障研究所研究委員
INDEX
中国税関総署は2026年10月14日、同年1~9月期の貿易統計の速報値を発表した。インドの対中輸出は、40.7%増の192億6000万ドルへと急増したものの、貿易赤字も20.7%増の1059億3000万ドルに拡大した。
輸入額が輸出額の約6.5倍に上るため、貿易赤字が一段と膨らんでいる。インド側の赤字拡大は、中国製の機械類や産業用中間財への継続的な依存を反映している。
「中国と係争関係にある機微な国・地域」への輸出を「許可制」へ
その5日後の10月19日、中国商務部と税関総署は「中国と係争関係にある機微な国・地域」に対するトンネル掘進機(TBM)、歩行式ショベル、高原型吹付機、ドローン、大型浚渫船の輸出にあたり、「輸出管理法」「改正対外貿易法」「改正税関法」「両用品目(デュアルユース)輸出管理条例」の関係規定に基づき、中国商務部による許可制とすることを公布した。11月18日から実施される。
当局の審査と許可を義務付ける「許可制」と規定していることに、中国当局が外交レバレッジ(外交を自国に有利に進めるための手段)に利用しようとしている点がうかがえる。
2026年7月以降10月に至る現在も、インド東北部のアルナーチャル・プラデーシュ州の実効支配線(LAC)付近において、中国とインドの両軍が至近距離で対峙する「フェイスオフ(face-off)」状態が続いている。
インド側が実効支配する同州について、中国も領有権を主張し、「蔵南(南チベット)」と呼んでいる。中国軍がLACを越境して侵入し、テント設営をしているため、インド軍が睨み合って防衛している。最近の両軍衝突の正確な状況や各地点の状況については十分な情報が公表されておらず、本稿脱稿時点で暴力行為や死傷者は報告されていない。
しかし、中印国境情勢は依然として緊迫しており、LAC沿いに部隊を配備し続ける両国は、「局地的な軍事衝突」へのエスカレーションを防ぐために、外交ルートでの協議を続けている。
11月18日から中国が実施する同規制は、「中国と係争関係にある機微な国・地域」を適用対象としているが、その規制内容と高山地帯で使われる特殊なスペックから、インドを具体的な標的としていることが明白である。
そのねらいは、インド側の防衛インフラの構築を妨害することにある。中国とインドの両軍がLACを挟んで睨み合いを続けるタクシンやアサフィラが位置するこの係争地帯の東側には、シアン川(インドのブラマプトラ川上流:中国のヤルンツァンポ川の下流)が流れる。中国が世界最大級のメガダム建設を進めているため、インドはシアンダムの建設を急いでいる。
中国製のトンネル掘進機、歩行式ショベル、高原型吹付機、ドローンを輸出する場合、輸出事業者のみならず、「最終使用者(エンドユーザー)」も、中国当局の許可なく「中国と係争関係にある機微な国・地域」へ移転・提供しないことを誓約しなければならない。
2/4 PAGES
この記事は会員限定です
残り 2916文字
各タグのフォローボタンをクリックしフォローすると、関連する新着記事をメールで受け取ることができます
151 記事
関連記事
本文の内容に基づいた記事をピックアップしています
三船 恵美 駒澤大学法学部教授、JFIR日本国際フォーラム上席研究員、RIPS平和・安全保障研究所研究委員
フォローすると、最新記事をメールでお知らせします。
みふね えみEmi Mifune
早稲田大学第一文学部卒。ボストン大学院(MA in IR)。学習院大学大学院政治学研究科博士後期課程単位取得満期退学。博士(政治学、学習院大学)。著書に『中国外交戦略 その根底にあるもの』、『米中露パワーシフトと日本』など。
KioskNews shows a cleaned-up reading view extracted from the publisher’s page — the original always lives on their site, not ours.